大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)41号 判決

一 当事者参加人主張の請求原因事実のうち、特許庁における手続の経緯、当事者参加人が脱退原告との間でその主張の日時に本件特許を受ける権利を譲り受ける契約を締結し、特許庁長官に対しその権利移転の届出をした事実、本願発明の要旨、審決理由の要点が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取消すべき事由の有無について検討する。

まず、当事者参加人の主張する取消事由(一)についてみると、成立に争いのない甲第二号証によれば、本願発明は、ガスの流れからエーロゾルを濾過する装置に関するものであるが、その作用原理は、エーロゾルの微細粒子を濾過材を通過する過程で互に衝突させ、これによつて固体粒子を凝集し、液体粒子を合着させ、これらを合着肥大化させ遠心力と重力の作用によりまたは補助手段として液体の洗滌作用を利用して除去しようとするものであることが認められる。

これに対して、成立に争いのない甲第三号証によれば、引用例の装置は、ガス脱臭装置に関するものであるが、同号証における「今別に設けたモーターから被駆動プーリ11で風車を運転して、次に吸収液の適量を供給管17を通して供給すれば、その吸収液は、………中央有孔円筒19の全面に平均に供給せられ、環状室16内の濾過材の間を縫いつつ回転による高遠心(例えば、毎分一~五m3程度では毎分約四〇〇〇、一五~三〇m3に対しては毎分約二〇〇〇~三〇〇〇回転の程度による)で微分衝突接触を繰返しつつ強制通過して後、環状室の外側有孔円筒20から微粒液となつて羽根5間を横切り、外側円錐筒4に衝つて還元し、その上端周囲から再び液滴の連続として、風車室体16の内壁に衝つて再度還元せられて、使用済液溜8に落下して取出連結口9から外部に出る。供給する吸収液は処理する有臭ガスの種類や負荷状態、処理現場の条件などによつて容易に吸収・溶解・中和するもの………を選び」(公報一ページ右欄五行から二二行まで)、「本発明では、臭気ガスは特殊風車の濾過材中を吸収液と共に、例えば前記のような濾過材の微細胞的空間で、互に微分され吸収液とガスは接触衝突しながら、遠心力で強制的に容易に通過するから臭気ガスと液との微分的衝突接触は極めて良好で、而も吸着、吸収の効率を落すことなく」(公報二ページ左欄一四行から一八行まで)の記載より明らかなように、汚染気体を清浄にするについて、被処理気体中の分離すべき微粒子を吸収液に吸収、溶解させて吸収液とともに流し去るものであることが認められ、引用例の装置は本願発明のようにエーロゾル中の微細粒子同志を衝突させ、これを合着肥大化させて分離するという技術思想については何ら示唆するところがない。

被告は、引用例においても濾過材中で汚染気体中に包含されている粒子と吸収液の粒子が接触して混合一体化し、合着肥大する旨主張する。しかし、前記甲第三号証を見ても、引用例において汚染気体中の粒子と吸収液の粒子とが合着肥大する旨を示唆する記載すら見当らず、前記認定のとおり引用例の装置は被処理気体中の分離すべき粒子を吸収液に吸収・溶解させて吸収液とともに流し去るものにほかならない。したがつて、被告の主張するごとく引用例と本願発明とが汚染気体中に吸収液の粒子が混在しているか否かの相違があるにすぎないものということはできない。

また、被告は、濾過材に汚染ガスを流通させてその粒子を合着肥大させることは本出願前周知の技術であり、この周知の技術を前提に引用例を見れば、本願発明は引用例より容易に発明をすることができる旨主張する。しかしながら、本件審決は本願発明が引用例そのものから容易に推考することができると認定しているのであつて、被告の主張するような周知技術を前提として引用例から容易に推考できるとしているのではない。してみると、被告の主張は審決の理由とは異なる別箇の理由によつて審決の結論を支持しようとするものであつて、かような主張・立証をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、審決において審理判断されない前記のような事項について裁判所に判断を求めることは、特許法が拒絶査定に対し出願人に審判請求の途を開きまずその手続において技術的事項について充分審理、検討する機会を与えることとした制度の趣旨と相容れないものがあるからである。

以上認定の事実によれば、本願発明と引用例とではその技術思想において当事者参加人主張のような相違があるのであるから、審決には両者の相違を無視し、その結果引用例より本願発明を容易に推考し得ると誤認した違法があるものといわなければならない。

三 よつて、当事者参加人の請求はその主張するその余の点について判断するまでもなく正当であるから、認容する。

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